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「世界は変わった。それでも日本の透析室は、まだマスクが当たり前?」
なぜ当院では、透析中のマスク着用を「一律の前提」にしていないのか
新型コロナウイルスの流行以降、日本の医療機関では、患者さんがマスクを着ける光景が日常になりました。
厚生労働省は、現在も医療機関を受診する際のマスク着用を推奨しています。
しかし、同時に厚生労働省は、マスクの着用は行政が一律に求めるものではなく、個人の主体的な選択を尊重し、個人の判断に委ねることを基本としています。
つまり、日本においても、本来は、
「医療機関に来た人は、全員が常にマスクを着けなければならない」
という法律上の義務があるわけではありません。
なかじま内科クリニックでは、感染対策の重要性を十分に理解したうえで、透析中のマスク着用を、すべての患者さんに一律に求めることを前提としていません。
患者さんの症状、感染状況、周囲への影響、体調、着用の希望などを確認しながら、必要な対応を個別に判断しています。
2026年、海外では「一律」より「リスクに応じた対応」
海外の公的な感染対策を見ると、マスクを着けるか着けないかを、すべての人に一律に決めるのではなく、感染リスクに応じて判断する考え方が多く採用されています。
アメリカ
米国疾病予防管理センター(CDC)は、医療施設において、咳などの呼吸器症状がある人や、感染者との濃厚接触があった人にマスクを提供し、施設内で着用するよう案内しています。
これは、症状や曝露歴などを確認したうえで、必要な人にマスクを使用してもらう考え方です。
CDCはマスクの感染予防効果を認めていますが、マスク単独ではなく、換気、手指衛生、ワクチン、距離などを含む複数の対策を組み合わせることを重視しています。
イングランド
イングランドのNHSでは、全国感染予防管理マニュアルに基づき、標準予防策と感染経路別予防策を組み合わせています。
マスクや呼吸用防護具は、感染症の種類、感染経路、患者さんの症状、実施する処置などを評価して選択します。
すべての患者さんと来院者に、すべての場所で常時同じマスク対応を求めるのではなく、臨床的なリスク評価を基礎とする考え方です。
オーストラリア
オーストラリア・ニューサウスウェールズ州の医療機関向け資料でも、マスクやP2/N95レスピレーターなどの使用は、患者さんの症状、感染症の種類、曝露状況、医療従事者が行う処置などを踏まえて判断するとされています。
マスクだけに頼るのではなく、換気、手指衛生、患者配置、距離の確保などを組み合わせる考え方が示されています。
WHO
世界保健機関(WHO)は、感染予防対策を、マスクだけに限定していません。
感染状況、医療施設の負担、患者さんの重症化リスク、換気環境、感染経路などを総合して、必要な感染対策を選択することを重視しています。
一律のマスク着用が必要となる状況もありますが、常に同じ対応を続けるのではなく、その時点のリスクを評価して決める考え方です。
海外は「マスクをしない」のではありません
ここで誤解していただきたくないのは、海外がマスクを否定しているわけではないということです。
海外でも、次のような状況ではマスクが積極的に使用されています。
咳、発熱、鼻水などの呼吸器症状がある
新型コロナ、インフルエンザ、RSウイルスなどが疑われる
感染者との接触があった
地域や施設内で感染症が流行している
飛沫やエアロゾルが発生する処置を行う
重症化リスクの高い患者さんを保護する必要がある
海外との違いは、「着けるか、着けないか」という二択ではありません。
患者さんや周囲の状況を評価せず、全員に同じ対応を続けるのか。それとも、その時のリスクに応じて対策を選ぶのか。
そこに考え方の違いがあります。
透析中、私たちは機械の数字だけを見ているのではありません
透析中には、血圧低下、気分不良、胸部症状、呼吸状態の変化、意識状態の変化などが起こることがあります。
そのため、スタッフは血圧、脈拍、SpO₂、透析装置の表示だけでなく、患者さん自身の状態を直接観察しています。
例えば、
いつもより顔色が悪い
表情がぼんやりしている
苦しそうな表情をしている
冷や汗をかいている
呼吸の仕方がいつもと違う
反応が鈍くなっている
あくびが増えている
声が弱くなっている
こうした変化が、体調を確認するきっかけになることがあります。
カナダのBC Renalや南オーストラリア州の血液透析ガイドラインでも、透析中はバイタルサインだけでなく、患者さんの状態を継続的に評価・観察することが重要とされています。
もちろん、顔色や表情だけで急変を判断することはできません。
顔色、表情、呼吸、発汗、患者さんの訴え、血圧、脈拍、SpO₂などを組み合わせて、総合的に判断する必要があります。
その一方で、顔の多くが覆われていれば、スタッフが得られる視覚情報の一部が見えにくくなる可能性があります。
マスクが負担になる患者さんもいます
透析は、一般的に長時間にわたって行われます。
その間ずっとマスクを着けることで、
「息苦しく感じる」
「口の中が乾く」
「会話がしにくい」
「表情が伝わりにくい」
と感じる患者さんもいます。
反対に、感染症への不安から、マスクを着けている方が安心できる患者さんもいます。
どちらか一方の考え方を押し付けるのではなく、それぞれの患者さんの希望や状態を尊重することが大切だと、当院は考えています。
なかじま内科クリニックの方針
当院では、透析中のマスク着用を一律の前提にはしていません。
患者さんご本人がマスクを着けたい場合は、その意思を尊重します。
一方で、症状がなく、感染症への接触もなく、院内や地域で大きな流行が確認されていない状況において、患者さんがマスクを外すことを希望された場合は、その選択について個別に対応します。
ただし、次のような場合には、マスク着用をお願いすることがあります。
咳、発熱、鼻水、のどの痛みなどがある
新型コロナやインフルエンザなどが疑われる
同居家族や身近な人に感染症が確認されている
施設内や地域で呼吸器感染症が流行している
周囲に感染した場合のリスクが特に高い患者さんがいる
医師またはスタッフが感染対策上必要と判断した
感染状況によっては、マスク着用、透析時間や場所の調整、検査、動線分離などをお願いする場合があります。
マスクを外すことが、当院の目的ではありません
当院の目的は、「マスクを外して透析すること」ではありません。
マスクを着けること自体を否定することでもありません。
私たちが大切にしているのは、
必要な場面では適切にマスクを使用し、必要性が低い場面では一律に強制せず、患者さんの顔、表情、呼吸、声、訴えをしっかり確認することです。
感染対策は、マスクだけで成立するものではありません。
体調確認
手指衛生
換気
咳エチケット
環境整備
患者さんの配置
症状がある方への個別対応
スタッフによる継続的な観察
こうした対策を組み合わせることが重要です。
「みんな同じ」ではなく、一人ひとりを見る透析へ
患者さんの状態も、感染症への不安も、マスクに対する考え方も、一人ひとり異なります。
だからこそ、なかじま内科クリニックでは、すべての患者さんに同じ対応を当てはめるのではなく、その日の症状、感染状況、患者さんの希望を確認しながら対応します。
マスクを希望する自由も、マスクが負担だと感じる気持ちも、どちらも尊重したいと考えています。
そして、透析中は、機械の数字だけではなく、患者さんの顔や表情を見て、声を聞き、小さな変化に気付くことを大切にしています。
感染対策と、患者さんを直接見る観察。
この両方を大切にすることが、なかじま内科クリニックの透析に対する考え方です。
※本記事は、2026年8月時点で確認できる国内外の公的機関および透析関連資料を参考に、当院の基本的な考え方を紹介したものです。
※感染症の流行状況、患者さんの症状、接触歴、院内の状況などにより、マスク着用や個別の感染対策をお願いする場合があります。
※マスク着用の可否は、患者さんの安全と周囲への感染リスクを確認したうえで、個別に判断します。
参考資料
・厚生労働省「マスクの着用について」
・厚生労働省「新型コロナウイルスに関するQ&A」
・米国CDC「Preventing Transmission of Viral Respiratory Pathogens in Healthcare Settings」
・米国CDC「Masks and Respiratory Viruses Prevention」
・NHS England「National Infection Prevention and Control Manual for England」
・WHO「Infection prevention and control in the context of COVID-19」
・NSW Health/Clinical Excellence Commission「Acute Respiratory Infection Guidance」
・BC Renal「Nursing Management of Complications during Hemodialysis」
・SA Health「Haemodialysis – Assessment and Monitoring of a Patient」
発熱で受診される方へ
当院では発熱のある患者様は、事前にお電話にてお問い合わせください。院内患者様への感染拡大防止のため、ご連絡なしのご来院はお控えください。なお、コロナやインフルエンザの検査は随時、行っております。ご理解、ご協力のほど、宜しくお願いいたします。


